読書案内

『ココロノマド --- 心の免疫力をつけるWebカウンセリング』

川西由美子著
朝日新聞社 定価1200円+税

 Webカウンセリングとは、インターネットを媒体として、書き言葉でおこなうカウンセリングのことです。

 カウンセリングを自室に居ながらにして受けられる利便性があります。たとえば、あなたが職場での対人関係に悩んでいたとします。不眠症気味になって、これ は何とかしなければいけないな、と思い始める。しかし、心療内科や精神科などの敷居はまだまだ高い。そんなどき、Webカウンセリングを知っていると、 「ためしに、一度相談してみる」という選択肢が広がるわけです。良質のカウンセリングを、秘密を守られながら、しかも自室から受けられるとすれば、追い詰 められてしまう一歩手前で解決を図ることができるかもしれないわけです。

 Webカウンセリングは、疲れていながら忙しすぎてカウンセリングを受けられない人や、人に会うことに不安を感じてひきこもりがちな人にも機会を提供できる可能性を広げます。

 もちろん、デメリットもあります。ひとつは表情や声といった言葉以外の表情が使えないことです。「雰囲気で察してもらう」ということが難しいわけです。 的確に文章であらわすという過程は、それ自体が解決の糸口になることもあるわけですが、書くことが苦手な人には不向きかもしれません。それから、「チャッ ト」とは異なり、やりとりの往復には時間が少々かかるので、一刻も待てない緊急の相談には向かないでしょう。しかし、その分、頭の中を整理し、問題に向き 合いじっくりと考えるためには適しているといえます。

 ところでWebカウンセリングの草分けの一人に川西由美子さんがおられます。彼女はこの分野がすでに発展している米国で勉強してこられて、「ココロノマ ド」という本格的なWebカウンセリングのサイトを開きました。やや、身びいきになるかもしれませんが、「ココロノマド」のすぐれているところは、セキュ リティが厳密であること、カウンセラーが選べるシステムであること、トレーニングに川西さんが責任を持ってあたっているということ、必要に応じて医療機関 やメンタルヘルスに関する情報などの情報提供もおこなっていることなどです。つまり、個人での開業ではなく、システムとしてWebカウンセリングを提供し ていることが、彼女の仕事の魅力といえましょう。

最近は御本も出されました。興味のある方は、ぜひコンタクトをとってみてください。

国立精神神経センター社会復帰相談部 部長  伊藤順一郎
「中年精神科医のつぶやき」第21回『自動化推進』Vol.32 No.4より著者の許可を得て転載